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当サイトでも、くどいように出てくる「IPアドレス」という言葉、ここではそのIPアドレスについて詳しく解説していきます。IPとは、その名の通り、Internet Protocolの略称のことで、インターネットワーキングには必要不可欠なプロトコルであり、その役割として「パケットを相手先に届ける」ことが挙げられます。しかし、パケットを相手先に届けるためには誰に届けるのかといった宛先情報が必要となってきます。宛先がわからないことには、いくら優秀なコンピュータと言えどもパケットを届けることは不可能です。そこで必要となるのが、リアルワールドでいう郵便番号、住所に相当するアドレスです。インターネットやイントラネットなどのIPネットワークに接続されたコンピュータには1台1台に必ずIPアドレスが割り振られているのです。



さて、みなさんもよく利用しているWebページなどのアドレスは、「http://www.XXXX.YYYY/~koro」のようにわかりやすい形式で表現されていますが、本来はこのホスト名、ドメイン名もわかりにくい数字の羅列で表されたものを人間にわかりやすく、覚えやすいものにした形式なのです。しかし、コンピュータはデジタル端末が故に、内部での処理は全て0と1を用いたデジタル信号(ビット信号)で処理・計算されています。つまり、コンピュータにとっては数値としてホスト名、ドメイン名を管理していた方が都合がよいわけです。では、コンピュータが一体どのようにIPアドレスを管理しているのかというと、通常32ビット(=4バイト)分の数値を8ビット(=1バイト)ごとに10進数で表記して、その間をピリオド「.」で区切るという表現方法が用いられています。わかりやすくいうと、0~255の範囲の数値(8ビット=256通り)を、ピリオドで区切って4つずつ並べた数値の羅列のことを言います(参考:「必須:コンピュータの情報単位」)。したがって、IPアドレスを使って表現できる組み合わせは、256X256X256X256通りで、理論上では約43億台(正確には42億9496万7296台)ものコンピュータをインターネット上に接続できるということになります。

◎IPアドレスの構成





■ネットワークアドレスとホストアドレス

前述したように、理論上では約43億台ものコンピュータがインターネットに接続することができるといいましたが、実際にそれを実現することは不可能なことで、もし仮に実現させたとしても重要な問題が発生してきます。例えば、仮にプロバイダがある会員に対して「125.254.158.459」のアドレスを日本にある特定のコンピュータに割り当て、もう一台のコンピュータをアフリカにある特定のコンピュータに対して「215.125.48.57」を割り当てた場合、そのプロバイダは世界中にコンピュータの中から該当する一台を探し出さなくてはなりません。こうなると、コンピュータに非常に大きな負荷がかかりますし、プロバイダのネットワーク内に意味のない数字が羅列することにもなり、管理する側としても尋常ならぬ作業となってしまいます。そこで、IPアドレスのビット系列をネットワークアドレスホストアドレスに分けて考えて、そこからクラス分けをして、IPアドレスを利用する規模によって振り分けることにしています。つまり、一見すると単なる数字の羅列であるかのように思いますが、IPアドレスはネットワークアドレスとホストアドレスから構成されているのです。ここでは、簡単に説明しますが、ネットワークアドレスとは、LANなどのひとつのネットワークに対して与えられるアドレスのことで、ホストアドレスは、LANに接続しているコンピュータ1台ごとに与えられるIPアドレスのことをいいます。

IPアドレスが32ビットのアドレス空間であることは触れましたが、ネットワークアドレスとホストアドレスがそれぞれどこからどこまでなのかを表す単位として「クラス」という概念が登場してきます。クラスはIPアドレスを利用する規模によってA~Eまでの5つのクラスに分けられています。詳しくはIPアドレスの先頭8ビット(1バイト)分の値によって区分されるようになっており、例えばある特定のコンピュータに「129.241.15.542」というIPアドレスが割り当てられていた場合、先頭の8ビットは129であることから判断して、クラスBのブロックに属するアドレス空間であることがわかります。

クラス 先頭8ビットの値 10進表記での値
クラスA 00000001 ~ 01111111   1 ~ 127
クラスB 10000000 ~ 10111111 128 ~ 191
クラスC 11000000 ~ 11011111 192 ~ 223
クラスD 11100000 ~ 11101111 224 ~ 239
クラスE 11110000 ~ 11111111 240 ~ 255


これらのクラスの内、クラスA~Cまでが、一般向けに配布が許されているアドレスブロックで、クラスDとクラスEは実際のコンピュータネットワークで利用されることはありません。クラスDはIPマルチキャストアドレスと呼ばれる特殊な用途のみに使用できるクラスで、クラスEが実験・検証用のために特殊なアドレスとして予約されているために通常は使用しません。IPアドレスの世界では、このクラスサイズが異なると「ネットワーク部」「ホスト部」のパラメータに違いが生じるようになっています。以下の図を参考にしてください。




例えば、ある企業が「203.214.154.X」というアドレスブロックを取得した場合を考えていきましょう。まず、このアドレスブロックは先頭が203で始まっているのでクラスCに相当していることがわかります。そして上図を見ると、クラスCのアドレスブロックでは、ネットワーク部が24ビットと定義されているので、先頭から3バイト目までの「203.214.154」の部分で組織が取得したネットワーク、つまりドメイン名を識別していることがわかります。また、ホスト部には8ビット分(256通り)の値が確保されているため、理屈上は8ビット、すなわち256個分の(203.214.154.0~203.214.154.255)のIPアドレスを取得したということができます。

これを基にクラスAとクラスBのアドレスブロックによって取得可能なIPアドレスの数を算出すると、クラスAが24ビット分、つまり256X256X256=16,777,216個ということになり、クラスBは16ビット分、つまり256X256=65536個になります。しかし、クラスBでもよほどの大企業でない限りは十分すぎるボリュームです。最近ではIPアドレスが枯渇してきているという理由から、クラス単位でアドレスブロックを配布するということはなくなり、CIDRブロック単位での配布が一般的となっています。これについては以下の「IPアドレスの枯渇問題」を参考にしてください。


■IPアドレスの枯渇問題

IPアドレスは今から7~8年前は前述したようなA~Cのクラス単位で配布していました。つまり、最も小さい配布単位であっても256個分(クラスC)のアドレスブロックであったために、仮に社内にコンピュータが20台しかない企業であってもクラスCのアドレスブロックを容易に取得することができたのです。それは、個人でも同じ事で、自分の家にコンピュータが1台しかなくても、256個分のアドレスを取得することができていたのです。あるいは、企業内に257個のコンピュータが存在する場合には、たった1台だけのために、クラスBに相当する65536個分のIPアドレスを取得することさえ可能であったのです。たったひとつの固定IPアドレスを取得するのにも追加料金を払わなくてはならない現在に至っては非常にうらやましい状況です。JPNICも今ほどIPアドレス取得に関して厳密なチェックを行っていなかったため過剰にアドレスブロックを配布していました。しかし、結果的には、こういった配布形態とインターネットの爆発的な普及によって、IPアドレスを不足、枯渇化へと導いていったわけです。

そのため、現在ではクラス単位でのアドレスブロックの配布は原則として禁止されています。また、このような枯渇化に対しての対策が、IPv6(version6)といわれる次世代のIPアドレスの実装で、現在急ピッチで進行してしています。しかしながら、近年のインターネットの爆発的な普及は、この次世代IPアドレスが全世界に実装されるまでのんきには待ってはくれません。そこで、一時的な対策としてとられているのが、CIDRブロック単位でのIPアドレスの配布ということになります。


■CIDRブロック

CIDR(Classless Inter Domain Routing)と書いてサイダーと呼ばれています。CIDRとは、IPアドレスの枯渇に対する短期的な対策としてとられた対応技術のことです。そもそもIPアドレスが枯渇していくのは、クラスという概念があるためなので、IPアドレスを有効に利用するためにはクラスの概念をなくしてしまえばいいわけです。CIDRはこれは実現する技術で、この技術を使うとネットワークアドレスとホストアドレスの境界線を可変することができるようになり、実質的にクラス分けの概念をなくすことができるのです。

わかりやすく言うと、クラスCよりもっと小さな単位でアドレスブロックを分割してそのうちの1ブロックを割り当てるというわけです。仮にクラスCのアドレスを分割して配布した場合には、ひとつの組織に対してコンピュータの台数以上の余分なIPアドレスを配布するようなことがなくなるかわりに、配布可能な組織の数がどんどん増えていくことになります。分割の単位は以下の表のとおりです。

クラスCの分割 配布可能なIPアドレスの数 配布可能な組織数
分割なし 256個(8ビット) 1
2分割 128個(7ビット) 2
4分割 64個(6ビット) 4
8分割 32個(5ビット) 16
16分割 16個(4ビット) 32
32分割 8個(3ビット) 64
64分割 4個(2ビット) 128


では、実際の例で考えていきましょう。例えば、組織内にコンピュータが6台あった場合には、クラスCのブロックを32分割して配布した8個分のIPアドレスを取得することができます。もしも、将来性を考えた場合には、16分割した16個分のIPアドレスを取得した方が妥当であるといえます。このようにクラスCのブロックを分割して配布することは、短期的とはいえ非常に有効な手段なのです。ただし、CIDRは複数のクラスCを取得している団体しか利用することはできません。一般的には複数のクラスCを取得することはできませんので、CIDRを利用するのは、主にプロバイダということになります。プロバイダは、JPNICからIPアドレスの割り当て業務を委任されています。したがって、プロバイダは自分の手元にあるたくさんのIPアドレスブロックをこのように細かい単位で「切り売り」して、各組織に与えているというわけです。


 

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